最近、仕事で民事裁判を傍聴しています。
特に面白いのが、労働問題。
僕も、昔勤めていた会社を辞める時にひと悶着あったので、労働問題にはかなり興味があります。
そこで、今回、前の会社を退職するときにあった僕と会社の押し問答を書いてみようと思います。
まず、僕は退職予定日の一か月半前に、階級が一個上の上司に退職を申し出しました。
その後、会社との話し合いが行われました。
会社の言い分は「そんな急に言われても困る」。
そこで僕は「ん?」となったのです。
「急に言われた」? 僕の認識が間違っていたのか?
そこで、調べ直してみたのですが、
やっぱり正社員は退職の14日前に申し出をすれば、極端な話、申し出をしてから14日後に会社に行かなくたって怒られない、とのこと。
その3倍も時間にゆとりをもって「退職します」って言ってるのに、どの辺が急なんだ?
しかし、「会社の規則では3か月前と決められている」と言ってきました。
就業規則。確かに大事です。
しかし、1か月くらいならまだしも、3か月などという「14日」から大きく離れた就業規則は、無効になることが多いのです。「常識外れ」という理由で。
そもそも、あの会社が1か月半あれば代わりの人員を余裕をもって手配できるのは、経験上わかっています。
「馬鹿じゃねぇか!? こっちは譲りに譲って一か月半前に言ってるんだ! 常識外れの就業規則に従う必要はねぇ!」
と啖呵を切る妄想をして、丁重に会社に退職の旨を伝えました。目指すは円満退職なので。
すると会社は今度は、「損害賠償で訴えることになる」と言ってきました。
これは大変です。おそらく、ゼロ6~8個ぐらいの単位が請求されます。社会人経験1年半のしがない警備員に払えるはずありません。
が、これにも落とし穴が。
「やめたら損害賠償を請求するぞ!」っていう会社、結構いるみたいですが、
99%、「損害」と「退職」の因果関係を証明できず、会社側の敗訴で終わります。
大体、人が一人退職したことによる損害ってなんやねん。
契約先が吹っ飛ぶわけでもあるまいし。
僕の抜けた穴に入ってもらってもらった人への人件費が損害なのか?
それ、僕が辞めなければもらってた給料じゃん! 何が損害だ! 心外だ!
「やれるもんならやってみな! 裁判で泣きを見るのは、貴様らの方だ!」
と、心の中で中指を立てて、丁重に会社に退職の旨を伝えました。目指すは円満退職なので。
すると会社は今度は、「面接に行った会社が勤務態度の確認の電話をうちの会社にしてきたら、勤務態度が悪かったとか、退職の時もめたとか、不利なことを話すことになる」だって。
やんわりと言ってるけど、たぶん、脅迫です、これ。
ここまで来ると、上から言わされているだけの上司も可哀そうになってきました。
しかし、そもそも、きょうび前の勤務先に電話して、勤務態度を確かめる、なんてあまりやらないそうです。
仮に面接に行ったA社が前の会社に電話したとして、そこで「あ~ノックね。あいつはね~、とんでもない奴なんですよ~」などと言おうものなら、
そこでA社に問題視されるのは、僕の勤務態度ではなく、個人情報をあっさり洩らした会社のコンプライアンスです。
特に、警備業でこれはアウトでしょう。
「やりたくばやればいい! 社会的に抹殺されるのは、僕ではない。き~さ~ま~ら~だ~! フハハハハハハ!」
と魔王のような高笑いを鏡の前でやってから、丁重に会社に退職の旨を伝えました。目指すは円満退職なので。
以上のやり取りは、一度に行ったのではなく、会社の脅迫、じゃなかった、主張が伝えられる⇒ネットを駆使して会社の恫喝、じゃなかった、主張に法的根拠があるのか見当⇒会社のわがまま、じゃなかった、主張に法的根拠はないので、僕の退職は止められませんと答える⇒会社の新たな脅迫文、じゃなかった、主張が伝えられる、を繰り返して行われました。
ようやく退職を勝ち取ったのは、1週間前でした。
今、退職を検討している人へ。
仕事がきつい会社ほど、あの手この手で退職をあきらめさせようとします。
「これこれこういう理由で退職は認められません」と言われると、「そうか……」と退職をあきらめてしまいます。
しかし、絶対にその場で「退職できないんですね。わかりました。退職をあきらめます」と即答しないでください。
必ず、「考えさせてください」と言って、その場を去りましょう。
調べてみると、会社の主張には何の法的根拠もないことが多いです。実際、僕の場合は全部そうでした。
その場で決断して、会社に返事をしなければいけない理由なんて何一つありません。30分もあれば、会社の言い分がおかしいことを裏付けるのには十分でしょう。
労働者は、退職するときは会社よりも立場が上になるということを、覚えておいてください。
正社員である以上、簡単にクビにすることはできません。そして、簡単に退職を邪魔されることもないのです。
こっちの言い分がよほどの常識はずれでない限り、退職できます。ある程度のわがままも通せます。
そして、雇用する側の人へ。
退職したいという人に対して、昇進や給料アップを約束したり、待遇の改善を申し出たりする会社があります。っていうか、僕も言われました。
でも、そういう離職対策は、退職の申し出が出る前からやってないと、付け焼刃の離職対策では何の意味もないです。
僕の場合、「この会社で昇進しても、なんもいいことないな」と思っていたので、昇進をちらつかされても「なにそれ?おいしいの?」って感じでした。
日ごろから離職率対策をすることが大切です。
「もっとよく考えて」というフレーズを言うこともあるかと思いますが、
よく考えて言ってるんです。
そもそも、「この日にやめます」と日にちを指定していってきたのなら、その退職の申し出は決して衝動的なものではなく、かなり計画されたものです。
「最近の若い奴はすぐやめる!」とかいう前に、ちょっと周りを見てください。
もしかしたら、「うちの会社だけ最近の若い奴はすぐやめる」のかもしれません。