去年あたりから危険運転の危険性(しまった、言葉が被った……)が注目を集めています。
今回傍聴したのも、その話題の危険運転でした。
とある青年が恋人とともにバイクに乗って二車線の大通りを走っていたところ、前を走る車が信号が青になっても発車しなかったのです。
後ろの車からクラクションを鳴らされ、青年も前の車にクラクションを鳴らします。すると前の車はすごいスピードで走り出しました。
そのままバイクがしばらく走っていると、さっきの車が待ち伏せするかのように路肩で待っていて、バイクの後ろに入り込んだのです。
そのまま後ろから車間距離を詰めてくる、いわゆるあおり運転を仕掛けてくる車。
さらに、車はもう一方の車線に出てバイクと並走をし始めました。そして、バイクの方に急激に車を寄せては戻るということを繰り返したのです。
この光景は、車の後ろを走っていた別の車のドライブレコーダーに録画され、裁判でも証拠として公開されました。
バイクの隣を走っていた車が、急に車線を乗り越えてバイクに近づき、すぐに離れる。
何が怖いって、後ろを走っていたどらレコのある車の運転手も、前を走る車の非常識な運転に追突の恐怖を覚えたことです。「うわっ、あぶねぇ」という運転手の声もしっかり録音されていました。
その後、車は今度はバイクの前に躍り出て、急激にスピードを落とします。
車をよけようとしたバイクは転倒し、二人は路上に投げ出され、重傷を負いました。一方、車はそのまま立ち去っています。
その後逮捕されたのは中年の男でした。
男が危険運転をしていたのは間違いなく、裁判の争点は「転倒した時、車はバイクに接触したか」。
男は「接触した感覚はなかった。接触はしていない」と主著しています。
弁護側は無罪を主張しているわけではなかったので、接触しようがしまいが「危険運転致傷罪」は成立するみたいですが、罪の重さが変わってくるのでしょう。
ただ、男は「接触したとは思っていない」と言いつつも、後ろを走っていたバイクが見えなくなったことから、バイクが転倒したこと自体は認識しており、「ざまぁみろ」と思ってその場を去ったとのことでした。
どうしてこんな危険運転をしたのかというと、「カチンと来たから」。おそらく、最初のクラクションが原因でしょう。
男は、車を手に入れて1か月ぐらいだったにもかかわらず、事故後しばらくして車を手放していました。警察が売り飛ばされた車を見つけ出して調べてみたところ、車の後部に傷があったそうです。
裁判では、被害者の代理人の弁護人が出廷し、被害者のメッセージを代読しました。
事故後大怪我をして日常生活もままならなかったこと、恋人の両親に包帯ぐるぐる巻きで結婚の報告をしなければいけなかったこと、事故から1年近くたった今でも事故の時の情景を悪夢に見てうなされること、事故現場の近くを通ると震えが止まらないこと、被告の男の仕返しが怖くて引っ越したこと(警察からもそうしたほうがいいとアドバイスがあった)などを語りました。
被告の動機は「カチンと来たから」。
自分の感情がコントロールできない人間が、車という機械をコントロールできるわけがないし、コントロールする資格はないのです。